ことば百科

文章の書き方・ととのえ方

14, 避ける

  1. 比喩(ひ‐ゆ)表現と否定表現の併用は避ける
  2. 二重否定は避ける
  3. 不要・不明の指示詞は避ける
  4. 不要な接続詞は避ける
  5. 同じことばの繰り返しは避ける
  6. 同じ意味のことばの繰り返しは避ける
  7. 同音のことばの繰り返しは避ける
  8. 「~的」「~性」「~化」の多用は避ける
  9. 「および」と「または」の併用は避ける
  10. 紋切り型の表現は避ける
  11. 文語調のことばは避ける
  12. なじんでいないカタカナ語は避ける
  13. くだけたことばは避ける

比喩(ひ‐ゆ)表現と否定表現の併用は避ける

 「~のように」(比喩表現)、「~でない」(否定表現)という言い回しは、伝えたい事がらをあいまいにする。

【よくない例】

 将棋は囲碁のように勝負が早くつかない。

 この例文は三つの解釈ができる。

 〔1〕将棋は勝負が早くつかない。囲碁も勝負が早くつかない。

 〔2〕囲碁は勝負が早くつく。しかし、将棋は勝負が早くつかない。

 〔3〕将棋も囲碁も両方、勝負は早くつかない。しかし、両者を比べると、囲碁のほうが勝負は早くつく。

 3通りの解釈ができる文を書いてはいけない。それぞれの解釈に従って書き換えると、次のようになる。

【書き換えた例】

〔1〕将棋も囲碁も勝負は早くつかない。

〔2〕将棋は、囲碁と異なり、勝負が早くつかない。

〔3〕囲碁に比べて、将棋は勝負が早くつかない。

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二重否定は避ける

 「~しないと、~しない」「~といえないこともない」など、一つの文で否定表現を重ねると、持って回った言い回しに感じる。とくに注意・指示などを含む文では、すっきりした表現にすることが肝心である。

【よくない例】

 炭酸カルシウム混入のゴミ袋に入れないと、生ゴミは回収してもらえないことがある。

【書き換えた例〔1〕】

 炭酸カルシウム混入のゴミ袋に入れれば、生ゴミは回収してもらえる。

【書き換えた例〔2〕】

 生ゴミを回収してもらうためには、炭酸カルシウム混入のゴミ袋に入れる。

【よくない例】

 湿度によっては、有毒ガスが発生しないといえないこともないので、薬品を保管する場所には注意してください。

【書き換えた例】

 湿度によっては、有毒ガスが発生する恐れがあるので、薬品を保管する場所には注意してください。

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不要・不明の指示詞は避ける

 「これ」「それ」「この」「その」など、同じ語句の繰り返しを避けるために使われる語を指示詞という。指示詞は、適切に使えば文を簡潔にする。しかし、あえて用いる必要のない指示詞や、何を指しているのかわからない指示詞がけっこう見受けられる。

【よくない例】

 書店と画廊を経営しているA氏は、30日にチャリティーオークションを開催するが、これに先立ち、これへの参加を呼びかけるために、報道陣を集めて、緊急記者会見を行った。

 「これ」が2回登場する。一つめは「開催」、二つめは「オークション」をそれぞれ指している。指示する内容は、決して不明ではない。しかし、この例では、無理をして「これ」を2度も使う必要はない。次のように書き換えたほうがよい。文も手ごろな長さになる。

【書き換えた例】

 書店と画廊を経営しているA氏は、30日にチャリティーオークションを開催する。開催に先立ち、オークションへの参加を呼びかけるために、報道陣を集めて、緊急記者会見を行った。

【よくない例】

 書店と画廊を経営しているA氏は、30日にチャリティーオークションの計画を発表した。B氏が主催するバザーの計画に触発されたためである。ところが、C氏はこれに反対している。

 「これ」は何を指しているのか。指示詞にいちばん近いので、「(B氏のバザーの)計画」を指していると思えるが、文章の流れからは、「(A氏のチャリティーオークションの)計画」であるとも読める。あるいは、両方かもしれない。

 指示する内容をはっきりさせるためには、ことばを補うとよい。

【書き換えた例〔1〕】

 書店と画廊を経営しているA氏は、30日にチャリティーオークションの計画を発表した。B氏が主催するバザーの計画に触発されたためである。ところが、C氏はこのチャリティーオークションの計画に反対している。

 指示詞と指示される内容が離れている場合には、ことばを補わないと、混乱するだけである。

 この例では、指示詞を使わないほうがさらによい。

【書き換えた例〔2〕】

 書店と画廊を経営しているA氏は、30日にチャリティーオークションの計画を発表した。B氏が主催するバザーの計画に触発されたためである。ところが、C氏はA氏の計画に反対している。

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不要な接続詞は避ける

 ふつう、文と文の関係を明確にするためには、接続詞を積極的に用いたほうがよいと思われている。ところが、実際には逆である。文の並べ方(文章の構成)が整然としていれば、むしろ省いたほうがよい。文章がスムーズに流れて読みやすくなる。

【よくない例】

 夏の夜空に威勢のいい音をまき散らして花火がはじけた。そして、それを合図に太鼓の小気味よい音が鳴り響いた。すると、浴衣姿の若い男女が、恥ずかしそうにしながら櫓(やぐら)の回りを囲んだ。そして、盆踊りが始まった。

 いちいち接続詞が挿入されているので煩わしい。「そして」が、短い文章の中で2回も出てくる。例文は、「盆踊りが始まる」ことに向かい、時間の順序に従って組み立てられていることが明らかだから、接続詞を省略したほうが効果的である。

【書き換えた例】

 夏の夜空に威勢のいい音をまき散らして花火がはじけた。それを合図に太鼓の小気味よい音が鳴り響くと、浴衣姿の若い男女が、恥ずかしそうにしながら櫓の回りを囲んだ。盆踊りが始まった。

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同じことばの繰り返しは避ける

 一つの文の中で同じことばを繰り返すと、文章の流れが滞り、読み手を疲れさせることがある。どちらかを削るかべつのことばに置き換えるかして、冗長さをなくすことが大事である。

【よくない例】

 統合される選挙区は以下の3選挙区である。

【書き換えた例】

 統合される選挙区は以下の三つである。

【よくない例】

 今回のテストでは、最大出力と回転数をテストした。

【書き換えた例】

 今回は、最大出力と回転数をテストした。

【よくない例】

 一つの文の中に同じことばが2度出てくるような文は、読み手を疲れさせ、読み手の思考を妨げる。

【書き換えた例】

 一つの文の中に同じことばが3度出てくると、読み手は疲れ、思考が妨げられる。

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同じ意味のことばの繰り返しは避ける

 話しているとあまり気にならないが、書いてみると気になることがある。同じ意味のことばの繰り返しである。まちがいと言い切れないものもあるが、簡潔な文章を書くためには、重複した表現は避けたほうがよい。

【例】

×その問題はいまだに未解決である。

○その問題は未解決である。

×きょう春一番の風が吹いた。

○きょう春一番が吹いた。

×自ら墓穴を掘ってしまった。

○墓穴を掘ってしまった。

×いちばん最初は緊張するから、いちばん最後に歌います。

○最初は緊張するから、最後に歌います。

×今勉強しておかないと、あとで後悔することになるよ。

○今勉強しておかないと、あとで悔やむことになるよ。

×議題の審議順位については、議長にすべてを一任した。

○議題の審議順位については、議長に一任した。

×炎天下のもと、各校の選手は堂々と行進した。

○炎天のもと、各校の選手は堂々と行進した。

×懸命の消火活動のおかげで、火事はようやく鎮火した。

○懸命の消火活動のおかげで、ようやく鎮火した。

×犯行現場には、血痕(けっ‐こん)の跡がてんてんと残されていた。

○犯行現場には、血痕がてんてんと残されていた。

×サークルに加わって1年になるが、いまだに周囲との違和感を感じる。

○サークルに加わって1年になるが、いまだに周囲との違和を感じる。

×日本古来からの習慣が、少しずつ忘れ去られていくのは残念だ。

○日本古来の習慣が、少しずつ忘れ去られていくのは残念だ。

×昨日、総理は官房長官に辞意の意向を伝えた。

○昨日、総理は官房長官に辞意を伝えた。

×昨夜来の雨で、木々の緑はいっそう鮮やかになった。

○夜来の雨で、木々の緑はいっそう鮮やかになった。

×伝言は必ず伝えてください。

○必ず伝言してください。

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同音のことばの繰り返しは避ける

 一つの文の中で、同音の語句が繰り返し出てくると、耳障りである。同音混同による読みちがいの起きる可能性がある。同音の助詞を続けるのも避けたほうがよい。

【よくない例】

 彼のライバルと目される人物より入手した耳よりな情報は、思っていたよりも、より価値の高いものだった。

【書き換えた例】

 彼のライバルと目される人物から入手した耳よりな情報は、思いの外価値の高いものだった。

【よくない例】

 最新の技術を採用した器具なので、効率は非常に高いので、早急に購入することをお勧めする。

【書き換えた例】

 最新の技術を採用した器具なので、効率は非常に高い。(したがって、)早急に購入することをお勧めする。

【よくない例】

 この部分は次のように書き換えたほうがわかりやすいが、味わいが乏しくなる。

【書き換えた例】

 この部分は次のように書き換えるとわかりやすい。しかし、味わいが乏しくなる。

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「~的」「~性」「~化」の多用は避ける

 「~的」「~性」「~化」のように、他の語句の下について意味を加えたりする語を接尾語という。接尾語を用いれば、新しいことばを容易に生むことができるので、気がつくと、自分自身でもどういう意味だかわからないようなことばを使ってしまうこともある。

 達意の文章を目指すなら、「~的」「~性」「~化」の使用は、抑えるようにしたほうがよい。

 なお、慣用的にしばしば使われることば、たとえば「積極的」「危険性」「多様化」などは用いても違和感はない。

【例】

×金銭的補償は考えていない。

○金銭による補償は考えていない。

×合目的性のある方法を採り入れたい。

○目的にかなった方法を採り入れたい。

×高水準性が求められている。

○高い水準が求められている。

×装置の高効率化がポイントになる。

○装置の効率をあげることがポイントになる。

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「および」と「または」の併用は避ける

 一つの文の中で、並列を表すことば(「および」「と」)と選択を表すことば(「または」「あるいは」)を使うと、どれとどれが「並列」で、どれとどれが「選択」なのかがわかりにくくなる。どちらも、実務文書ではよく用いられることばだけに注意が必要である。

【よくない例】

 年度末試験会場に持ち込んでもよい参考書は、「現代アメリカ文学の潮流」または「世紀末のヨーロッパ」および「ジョイスの肖像」である。

 参考書は2冊持ち込んでよいことだけはわかる。しかし、その組み合わせが、わからない。持ち込んだ参考書の組み合わせが理由で、試験を受けられない学生が現れたとしたら、その学生はだれを恨めばよいのだろう。

 学生に恨まれないためには、「並列」か「選択」を明確にする。べつのことばを使って書き換えよう。

【書き換えた例〔1〕】

 年度末試験会場に持ち込んでもよい参考書は、「現代アメリカ文学の潮流」と「世紀末のヨーロッパ」のどちらか1冊と、「ジョイスの肖像」である。

 文を二つに分ける、箇条書きにする。これらも、誤読を避けるためのよい方法である。

【書き換えた例〔2〕】

 年度末試験会場に持ち込んでもよい参考書は、「現代アメリカ文学の潮流」と「世紀末のヨーロッパ」のどちらか1冊とする。このほかに、「ジョイスの肖像」も持ち込んでよい。

【書き換えた例〔3〕】

 年度末試験会場に持ち込んでよい参考書は以下の2冊である。

 ・「現代アメリカ文学の潮流」あるいは「世紀末のヨーロッパ」

 ・「ジョイスの肖像」

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紋切り型の表現は避ける

 なるほど紋切り型の表現は便利である。それだけで何かを伝えることができたような気分になる。だが、実際には、読み手に、言い古された陳腐な印象を与えるだけで、書き手の感じ方をそれほどぴったりとは伝えてくれない。

 手垢(て‐あか)のついた表現に頼らず、感じたことや事実を率直に伝えることを心がけよう。

【紋切り型の表現の例】

  • ~と思う今日このごろである。
  • いやな顔ひとつせず、手弁当で~
  • サッカーは、まさに筋書のないドラマだと言われるが~
  • 開店早々客が殺到し、店主はうれしい悲鳴をあげて~
  • 問い合わせの対応に大わらわ~
  • 試合終了の合図にがっくり肩を落とす選手たちは~
  • 新製品の完成を首を長くして待ちながら~
  • 資産家は100万円をポンと投げ出して~
  • 幕が切って落とされた30時間耐久レースは~
  • 処置は遅すぎるとみる向きもあるようだが~
  • 日夜努力を重ねたにもかかわらず~
  • 目には大粒の涙があふれていた。
  • 今後の成り行きが注目される。

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文語調のことばは避ける

 文語調のことばは、できるだけ避けたほうがよい。避けると、文章全体がやわらかくなり、読み手は文章に親しみを感じる。

 もちろん、文章の流れによっては、文語調のことばを使うときがある。また、文語調の慣用的な言い回し用いて、文章にめりはりを付けることもある。

 しかし、文語調のことばは避けることが基本である。

【例】

×あたかも夢の如(ごと)き人生。

○まるで夢のような人生。

×如何なる理由があろうとも。

○どのような理由があっても。

×往々にして誤るものだ。

○しばしば誤るものだ。

×少なからず不安にかられる。

○とても不安になる。

×A氏をもってしても解けぬ問題。

○A氏でも解けない問題。

×彼には誠意を尽くした。然(しか)るに、なんの返事もない。

○彼には誠意を尽くした。ところが、なんの返事もない。

×覚えず涙を流していた。

○いつの間にか涙を流していた。

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なじんでいないカタカナ語は避ける

 日本語として定着しているカタカナ語は多い。だから、カタカナ語をまったく使わずに文章を書くことはできないといってよい。カタカナ語である「テープレコーダー」や「ワープロ」を、べつのことばに置き換えることは、現代ではもはや不可能である。

 しかし、カタカナ語が羅列されると、まず、視覚的に読みにくくなる。さらに、ごくふつうの訳語があるのにカタカナ語を使うと、読み手の理解を妨げることになる。

 訳語が見当たらないカタカナ語は、もちろんそれを使う。訳語があるカタカナ語は使わないようにするほうがよい。

【よくない例】

 パースペクティブがしっかりしている人に、ベーシックな問題のジャッジを委ねたほうがよい。

【書き換えた例】

 見通しがしっかりしている人に、基本的な問題の判断を委ねたほうがよい。

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くだけたことばは避ける

 くだけた話しことばを用いると、読み手は、書き手の知性や常識を疑う。書かれた文章も信用しなくなる。くだけたことばは、私的な会話の中だけに留めたほうが無難である。

【例】

×宿題はまだしてない。

○宿題はまだしていない。

×彼の絵はとってもすごい。

○彼の絵はとてもすばらしい。

×そんな恰好をするのはヤダ。

○そんな恰好をするのはいやだ。

×提案は意外とグーだった。

○提案は意外に良かった。

×やっぱし母の料理は超おいしい。

○やはり母の料理は非常においしい。

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(『ことばの知識百科』三省堂刊より)