ことば百科

文章の書き方・ととのえ方

13, 近づける

  1. 主部と述部は近づける
  2. 修飾語と被修飾語は近づける

 主部と述部、修飾語と被修飾語はできるだけ近づけたほうがよい。離れていると、係り受け関係がわかりにくくなるだけでなく、大きな誤解が生まれやすい。

主部と述部は近づける

 主部と述部は、文の最も基本的な係り受け関係である。この係り受け関係を明瞭にするためには、主部と述部にはさまれた部分を前後に出すとよい。常に、主部から文を始めなければならないとは限らない。

【よくない例】

 各国の首脳は、まず事務次官レベルの会議が貿易・投資の自由化問題を中心に協議して原則的に合意したあと、事務局が非公式首脳会議の開催日を調整するべきだと考えている。

【書き換えた例〔1〕】

 まず事務次官レベルの会議が貿易・投資の自由化問題を中心に協議して原則的に合意したあと、事務局が非公式首脳会議の開催日を調整するべきだと、各国の首脳は考えている。

 首脳が考えている内容を示すところを文頭に出した。ただ、文が少々長い。文を分けて、次のように書き換えることも可能である。

【書き換えた例〔2〕】

 各国の首脳は次のように考えている。まず事務次官レベルの会議が貿易・投資の自由化問題を中心に協議して原則的に合意する。その後、事務局が非公式首脳会議の開催日を調整するべきであると。

【よくない例】

 若者に人気のあるA氏の講演が、資本主義が高度に発達し、第三次産業に就労する人口が急速に増大するなか、現代のキーワードである「消費」を考えるために企画された先日の連続教養講座でようやく実現した。

 前出の例の場合は、まだわかりやすい。この例の場合、「A氏の講演」は、まず「企画された」に係っていくように読まれてしまう。

【書き換えた例〔1〕】

 資本主義が高度に発達し、第三次産業に就労する人口が急速に増大するなか、現代のキーワードである「消費」を考えるために企画された先日の連続教養講座で、若者に人気のあるA氏の講演がようやく実現した。

 この書き換えも一文が長い。今度は「逆三角形型」を念頭に置いて、文に区切ってみよう。

【書き換えた例〔2〕】

 先日の連続教養講座で、若者に人気のあるA氏の講演がようやく実現した。

 この講座は「消費」を考えるために企画されたものである。資本主義が高度に発達し、第三次産業に就労する人口が急速に増大するなか、「消費」は現代のキーワードである。

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修飾語と被修飾語は近づける

 修飾語と被修飾語の関係もおろそかにできない。次の二つが原則である。

〔1〕修飾語は被修飾語の直前に置く。

〔2〕同じ語に、長い修飾語と短い修飾語が係る場合には、長いほうを先に出す。

【例】

 すばらしい小説家の長編小説。

 「長編小説」が「すばらしい」ことを伝えたいのなら、このままではいけない。原則〔1〕に従って、「すばらしい」と「小説家の」の順番を入れ換える。

【書き換えた例】

 小説家のすばらしい長編小説。

 「すばらしい、小説家の長編小説」と、読点を打つ書き換え方もある。ただ、この書き換え方は最善とはいえない。「読点の直前のことば(=すばらしい)は、より遠いことば(=長編小説)に係る」という規則を、読み手が知っていないと成立しないからである。

 誤解の余地がないので、右の【書き換えた例】の方法を勧める。読み手に頼る書き方は、できるだけ採用しないようにする。

【よくない例】

 点火するときは、少し「開」の方に側面に取り付けられたつまみを動かす。

 原則〔2〕に従って書き換える。

【書き換えた例】

 点火するときは、側面に取り付けられたつまみを少し「開」の方に動かす。

【よくない例】

 心温まる最新の技術で撮影された映画。

 「心温まる最新の技術」とはどんな技術ですか。こんな質問が飛んで来そうである。「最新の技術で撮影された」のような「文」が修飾語である場合には、「文」を先に出したほうが良い。

【書き換えた例】

 最新の技術で撮影された心温まる映画。

【よくない例】

 「人と地球にやさしい世紀を目指して」と題された先月15日に出版されたA氏の初の政策論文集。

 他に長い修飾語あっても、時を表す修飾語(「先月15日に出版された」)は、先に出したほうが良い。

【書き換えた例】

 先月15日に出版された「人と地球にやさしい世紀を目指して」と題されたA氏の初の政策論文集。

 このように、多くの場合、時を表す修飾語は先に出すほうが自然である。しかし、これにこだわりすぎてはいけない。

【よくない例】

 24日、東京外国為替市場は、急激なドル売りが進んだため、市場を閉鎖していたが、翌25日には取引を再開すると発表した。

 時を表す修飾語(「24日」)を文頭に出した。しかし、このままでは、「24日」に「閉鎖した」のか「発表した」のかがはっきりしない。「発表」が「24日」で、「閉鎖」はそれ以前なら、原則に従って次のように書き換える。

【書き換えた例】

 急激なドル売りが進んだため、市場を閉鎖していた東京外国為替市場は、24日、翌25日には取引を再開すると発表した。

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(『ことばの知識百科』三省堂刊より)