ことば百科

文章の書き方・ととのえ方

10, 1つに限る

  1. 文の場合
  2. 段落の場合

 一度に多くの内容を伝えようとすると、混乱する。これは、伝える側も受け取る側も同じである。

文の場合

 1つの文は1つの内容に限定することが望ましい。そのほうが、文章全体の構造は理解しやすくなる。ただし、これにこだわりすぎると、文章が一本調子になるので注意したい。

【よくない例】

 学園祭のピークを迎えた大学では、模擬店などで使い捨て容器の使用をとりやめ、地球規模での環境問題に関心が高まるなか、今後、環境保護の新しい担い手として期待され、ゴミ削減に大きな成果を挙げた。

 「事実」を伝える文の中に、「評価」が割り込んでしまっている。しかも、「~の使用をとりやめ」の係り先がはっきりしなくなっている。

【書き換えた例】

 学園祭のピークを迎えた大学では、模擬店などで使い捨て容器の使用をとりやめ、ゴミ削減に大きな成果を挙げた。地球規模での環境問題に関心が高まるなか、今後、大学は環境保護の新しい担い手として期待されよう。

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段落の場合

 段落も、伝えたい内容はできるだけ一つに限定しよう。なぜなら、読み手は一つ一つの段落の内容を追いかけて、最後に文章全体の主題を把握するのだから。

【よくない例】

 A氏の牧場は、標高差100メートルの山の斜面にある。地表は、大きな石が至る所むき出しのままである。牧場には、親牛が80頭、子牛が10頭ほどいる。まかれた牧草の種は、牛の蹄(ひづめ)で地面に踏み込まれる。牛という自然が行う農法である。

 発芽した牧草は、牛に食べられて短くなったほうがよく育つ。根を蹄で踏み切られても、そこから新しい根が出て増えるのだ。牧場には、土木機械を入れて整地した跡もない。わき水をたたえた小さな池も、手入れの跡がない。すべてが自然のままの環境である。

 「牧場の環境」と「牧場の農法」の2つの内容が混在している。わかりやすくするためには、この2つをきっちり分けたほうが良い。

【書き換えた例】

 A氏の牧場は、標高差100メートルの山の斜面にある。地表は、大きな石が至る所むき出しのままである。土木機械を入れて整地した跡もない。わき水をたたえた小さな池も、手入れの跡がない。すべてが自然のままの環境である。

 牧場には、親牛が80頭、子牛が10頭ほどいる。まかれた牧草の種は、牛の蹄で地面に踏み込まれる。発芽した牧草は、食べられて短くなったほうがよく育つ。根を蹄で踏み切られても、そこから新しい根が出て増える。牛という自然が行う農法である。

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(『ことばの知識百科』三省堂刊より)