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連載「日本のジェスチャー・世界のジェスチャー」 第14回


連載 「日本のジェスチャー・世界のジェスチャー」 東山 安子 第14回 指のジェスチャー(1)「指文字」


   モリス(※第1回参照)の著書『ボディートーク 世界の身ぶり辞典』には650余りのジェスチャーが載っていますが、そのうちの約半数は「手」「指」「腕」を使ったものです。

   モリスが前書きで述べているように、人類は二本足で立って両手が自由に使えるようになったことで、言語に加えて多彩な手や指のジェスチャーを発達させることができたのです。口ばかりでなく、手でも話すことができるようになったともいえるでしょう。

   今回は「指文字」を取り上げてみます。日本では、「1個」「1人」など数字の「1」を表すとき、人さし指を1本突き出しますが、この指文字も万国共通とはいえません。

   ドイツのハンミュンデンという小さな町の靴屋さんでこんな体験をしました。ドイツ語のできない私は「31」というサイズの靴を出してもらいたくて、指文字で「31」という靴のサイズを示しました。「3」を人さし指・中指・薬指の3本で、「1」を人さし指で表しました。ところがドイツ人の店員さんは、「3」を親指・人さし指・中指で、「1」を親指で表して確認してきたのです。

   この地域では親指で1を表すとは理解したものの、数件先のスタンドでカウンター越しにコーヒーを一杯と、つい人さし指で示したら、今度はコーヒーが何杯でてきたでしょうか? 親指と人さし指で2を表すことから、人さし指を見て2杯と思ったのでしょう。1人でコーヒーを2杯飲むはめになりました。

   中国の数字の表しかたも、親指と小指を立てて「6」、親指と人さし指で「8」、人さし指の先を曲げて「9」など、なかなかユニークです。

   このように、指で表す数字も国や地域でさまざまに異なります。身ぶり手ぶりで買い物をしようとすると、数字の表しかたの多様性に驚きます。

(2009年1月29日)
ジェスチャーイラスト
ジェスチャーイラスト
日本人が指文字で表す「31」。
人さし指・中指・薬指で「3」、人さし指で「1」を表現。
(イラスト:小野原礼子)
ジェスチャーイラスト
ジェスチャーイラスト
ドイツのハンミュンデンで体験した「31」を表す指文字。
親指・人さし指・中指で「3」、親指で「1」を表現。
(イラスト:小野原礼子)





東山 安子(とうやま やすこ) 東京生まれ。日本女子大学大学院・コロンビア大学大学院・シカゴ大学大学院修了。明海大学外国語学部教授を経て、現在、同大学院、立教大学大学院にて教鞭を取る傍ら、異文化間非言語コミュニケーション領域の執筆活動に従事している。



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