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連載「日本のジェスチャー・世界のジェスチャー」 第16回


連載 「日本のジェスチャー・世界のジェスチャー」 東山 安子 第16回 指のジェスチャー(3) 「OKサイン」


   「OKサイン」も表象動作(※第15回参照)のひとつです。前回のVサインと同様に、地域によって良い意味と悪い意味をあわせ持っています。

   指で輪をつくるOKサインは、モリス(※第1回参照)によれば、紀元1世紀から承諾のサインとして知られてきたといいます。現代では「アメリカのOKサイン」と呼ばれ、北アメリカとヨーロッパ各地で「OK」「よい」の意味で使われます。

   ところが、モリスがヨーロッパの25ヵ国、40地点でジェスチャーの分布図をつくるプロジェクトのためのインタビュー調査を行った結果、ベルギー、フランス、チュニジアでは「無」「ゼロ」を象徴し、「価値がない」ことを意味することがわかりました。また、中東や南米の一部ではこの輪のサインが性的侮辱を表します。これらは「アメリカのOKサイン」とは正反対の悪い意味を持っているわけです。

   日本ではどうでしょうか。「いいよ、OK」と承諾したり、「うまくいってるよ」と順調なことを示したりするのに使います。輪のサインでお金を表すこともありますが、そのときは輪を下向きで示したりします。この日本の「お金のサイン」は、お札を触るジェスチャーでお金を表す欧米では使われません。

   最近は日本でも、OKサインの代わりに親指を立てて「承諾」や「順調」を表す若者が増えましたが、年配のかたには「男」や「頭」の意味のほうが知られているのではないでしょうか。こうした「親指上げ」はアメリカではよく使われており、アメリカ人への調査では、親指上げはOKサインよりも答えに対する自信が込められており、強い意味を伝えられるといいます。

(2009年2月26日)
ジェスチャーイラスト
『日米ボディートーク』より「OKサイン」。
「承諾」のサインとしての良い意味をもつ地域と、
「価値が無い」「性的侮辱」という悪い意味をもつ地域がある。
ジェスチャーイラスト
『日米ボディートーク』より「親指上げ」。
「承諾」「成功」を意味する。「否定」「失敗」の意味では親指を下に向ける。





東山 安子(とうやま やすこ) 東京生まれ。日本女子大学大学院・コロンビア大学大学院・シカゴ大学大学院修了。明海大学外国語学部教授を経て、現在、同大学院、立教大学大学院にて教鞭を取る傍ら、異文化間非言語コミュニケーション領域の執筆活動に従事している。



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