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連載「日本のジェスチャー・世界のジェスチャー」 第3回


連載 「日本のジェスチャー・世界のジェスチャー 」 東山 安子 第3回 世界の挨拶(2)「握手」


   英語圏の挨拶といえば「握手」と思いがちですが、はたしてそうでしょうか。

   私がアメリカ人の共同研究者と調査した結果では、たしかに大人の男性同士では握手は典型的な挨拶でしたが、女性同士では抱き合って頬にキスをするのが一般的でした。そのほかにも、ほほを合わせたり、手を取り合ったりといった、相手とふれあう形の挨拶行動が多く見られました。腰をかがめるお辞儀はないものの、頭を軽く動かす会釈のような挨拶も男女ともによく使われています。

   握手は、比較的新しい挨拶行動で、使われ始めたのは19世紀初期のようです。お互いの地位が異なっても同じ動作を行うという点で、握手は平等主義的なジェスチャーであり、今日の西欧社会には適しているとモリス(※第1回参照)は言います。しかし、階層化された昔の社会ではあまりにも平等主義すぎると考えられ、その当時はまったく受け入れられなかったとも述べています。

   日本では、握手は日常の挨拶として定着しているとは言いがたく、外国の人と会ったとき、選挙運動での候補者と支援者、舞台上の俳優と観客など、限られた場面で使用されます。

   一方、多種多様なお辞儀が日常的な韓国では、握手も日常の挨拶として使われ、お辞儀をしながら握手をすることもよくあります。相手とふれあうことで友情や親愛の情を表す韓国の人々にとって、握手はなじみ深い挨拶行動のようです。 (2008年8月20日)

『日米ボディートーク』より「握手」。
アメリカ人の男性の典型的な挨拶行動。
相手と視線を合わせ、右手で力強く相手の手を握って上下に振る。

「ハグ&キス」。
アメリカ人の女性の一般的な挨拶行動。
相手の肩に手を回して抱き合い、頬にキスする。
(イラスト・小野原礼子)






東山 安子(とうやま やすこ) 東京生まれ。日本女子大学大学院・コロンビア大学大学院・シカゴ大学大学院修了。明海大学外国語学部教授を経て、現在、同大学院、立教大学大学院にて教鞭を取る傍ら、異文化間非言語コミュニケーション領域の執筆活動に従事している。



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