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連載「日本のジェスチャー・世界のジェスチャー」 第19回


連載 「日本のジェスチャー・世界のジェスチャー」 東山 安子 第19回 日本人に特徴的なジェスチャー(3) 「両手を合わせる」


    最後に取り上げるジェスチャーは「両手を合わせる」です。

   祈りのジェスチャーとして両手を合わせることは西欧でも日本でも使われます。この祈りの手の形は、「捕虜の縛られた手」をまねたことに由来し、敬虔で信心深い信徒の祈りのジェスチャーとして使われてきたとモリス(※第1回参照)は述べています。また、西欧では両手を組み合わせて祈ることもあります。日本では合掌といい、お墓参りや法事などで故人への追悼や冥福を祈るときに両手を合わせます。

   モリスは、この両手を合わせるジェスチャーが、アジアでは挨拶として使われる地域があると述べています。通常は頭を少し下げ、インドでは「ナマステ(namaste)」、タイでは「ワイ(wai)」として知られています。

   日本人は挨拶のときに両手を合わせることはしません。日本人に特徴的な使いかたは、親しい人に対して「お願い!」「よろしく」などと相手に頼みごとをするときや、「ごめん」「悪いね」などと謝るときに両手を合わせることでしょう。このときは、合掌と違い、両手を胸の前でなく顔の前で合わせ、目をつぶるのではなく相手の目を見ながら使います。両手ではなく、片手ですることもあります。

   留学生の話では、韓国でも日本のように、依頼や謝罪のときに両手を顔の前で合わせるようですが、調査をしたアメリカ人たちは、顔の前で手を合わせるのが不自然に見えると言います。人にものを頼むときにはどうするかと聞くと、胸の前で両手を組み合わせて
Please!と言う、ことばで依頼する、顔の表情で表す、などの答えがありました。

(2009年4月16日)
ジェスチャーイラスト
『日米ボディートーク』より「両手を合わせる」。
日本人に特徴的な使いかた。懇願や謝罪の意味で使う。





東山 安子(とうやま やすこ) 東京生まれ。日本女子大学大学院・コロンビア大学大学院・シカゴ大学大学院修了。明海大学外国語学部教授を経て、現在、同大学院、立教大学大学院にて教鞭を取る傍ら、異文化間非言語コミュニケーション領域の執筆活動に従事している。



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