ことばパティオ

連載「日本のジェスチャー・世界のジェスチャー」 第11回


連載 「日本のジェスチャー・世界のジェスチャー」 東山 安子 第11回 日常のしぐさ(1) 「座る」


   「座る」、「立つ」、「飲む」などの日常のしぐさは、それぞれの文化の衣食住の形態に大きく影響を受けています。また、同じ文化のなかでも、「伝統的な衣食住の形」と「現代の生活様式」がさまざまに移り変わり、それによって日常のしぐさも変化してきています。

   伝統的な日本家屋には和室があり、畳の上での正式な座り方には正座があります。しかし、最近の日常生活では椅子に腰かける機会のほうが多いでしょう。日本では、膝や足を揃えて手を膝の上に乗せる座りかたがきちんとした座り方であるとされ、学校で式典のあるときや受験の面接の練習などでこの座りかたを指導されることもよくあります。

   足を組んで腰かけるのは、日本ではかなりリラックスした動作と考えられ、面接官の前で足を組むことは避けるべきこととされます。ところがアメリカ人に調査したところ、面接で足を組むことはマイナス点の対象にはならないといいます。

   アメリカでは、授業中に教師が生徒の机に腰をかけて教えることも多々ありますし、教壇に腰かけて話をすることもあります。調査したアメリカ人たちは、授業では緊張感よりもリラックスした雰囲気の中での積極的な意見交換を大切にするといいます。

   また、アメリカでは、靴を履いたまま足を机にかける姿勢も、家庭内、図書館、教室でごく普通に行います。しかしモリス(※第1回参照)は、中東と東洋の一部、とくにサウジアラビア、エジプト、シンガポール、タイでは、相手に靴の裏を見せて座ることは強い侮辱を意味し、場合によっては殺人事件にいたることもあると忠告しています。日常のしぐさも所変わればさまざまな意味に解釈され、深刻な問題を引き起こすことがあることを心に留めておく必要があります。
(2008年12月22日)
ジェスチャーイラスト
『日米ボディートーク』より「机腰かけ」。
机の上に腰かける。アメリカでは、学校や家庭でごく普通に見られる。
ジェスチャーイラスト
『日米ボディートーク』より「足のせ」。
ソファーや椅子に腰かけ、靴を履いたまま片足や両足を机の上にのせる。





東山 安子(とうやま やすこ) 東京生まれ。日本女子大学大学院・コロンビア大学大学院・シカゴ大学大学院修了。明海大学外国語学部教授を経て、現在、同大学院、立教大学大学院にて教鞭を取る傍ら、異文化間非言語コミュニケーション領域の執筆活動に従事している。



「日本のジェスチャー・世界のジェスチャー」のバックナンバーはこちら