ことばパティオ

連載「日本のジェスチャー・世界のジェスチャー」 第6回


連載 「日本のジェスチャー・世界のジェスチャー」 東山 安子 第6回 肯定と否定のジェスチャー(2) 'No'


   相手に伝えるメッセージとして'No'は重要です。ところが、この否定のジェスチャーも万国共通とは言えません。日本でよく使われる否定のジェスチャーのうち、海外で通じにくいものを3例あげましょう。

   1つめは、腕や人差し指を交差して「だめ」「ない」「いない」「できない」などの否定を表すジェスチャーです。 ×印が否定として使われる日本では、これがジェスチャーに転じたようです。

   先日も、銀行で両替をしようとしている人に向かって、案内係の女性が、今日はATMが故障していまして、と言いながら両手を交差させていました。また、授業中に、ある学生に課題の発表を求めるべく指名をしたら、人差し指を交差させて「今日は準備できていません」という意味の目立たないサインを送ってきたこともあります。

   このジェスチャーは、調査をしたアメリカ人たちには理解されませんでした。アメリカではこのような場合どうするかと問うと、頭を左右に振って否定を表すという答えが多かったです。モリスは、この頭振りジェスチャーは世界の広範囲で使われると述べており、日本でも使われます。

   2つめは、顔の前で片手を立てて手を左右に振るジェスチャーです。これも日本人はよく使いますが、調査したアメリカ人たちには、「虫を払いのけている」とか「暑いから扇いでいる」としか理解されませんでした。

   3つめは、下のイラストにあるように、相手に向けて両手を振って、「いやいやとんでもない」と依頼を断るような場合。これも、ことばで断ることが基本のアメリカ人たちには通じにくいようです。
(2008年9月25日)

『日米ボディートーク』より「両腕交差」。
両腕や人差し指を交差させて否定を表す。

『日米ボディートーク』より「両手を左右に振る」。
両手や片手を左右に振って否定を表す。
   





東山 安子(とうやま やすこ) 東京生まれ。日本女子大学大学院・コロンビア大学大学院・シカゴ大学大学院修了。明海大学外国語学部教授を経て、現在、同大学院、立教大学大学院にて教鞭を取る傍ら、異文化間非言語コミュニケーション領域の執筆活動に従事している。



「日本のジェスチャー・世界のジェスチャー」のバックナンバーはこちら