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連載「日本のジェスチャー・世界のジェスチャー」 第15回


連載 「日本のジェスチャー・世界のジェスチャー」 東山 安子 第15回 指のジェスチャー(2)「Vサイン」


   指を使ったジェスチャーでよく知られているものに「Vサイン」があります。日本では写真を撮るときのポーズとしてよく使われています。一緒に「ピース」と言うことがあるのは、ベトナム戦争中、アメリカで反戦のサインとして使われたことと関連があるようです。

   モリス(※第1回参照)によると、「Victory(勝利)」を表すVサインは、1941年、戦争時の放送でベルギーの法律家がナチスに対抗する宣伝活動の象徴としてVサインを提案。当時、イギリスの首相だったウィンストン・チャーチルがその考えを採り入れて公に使い始め、それが徐々に政治、スポーツ、個人などのあらゆる勝利を表すサインとして世界中に普及することになったと述べています。

   日本・アメリカともに数字の2も表しますから、レストランで「何名様ですか」と問われ、「2人です」と示すときにも使います。手の向きをどちらを向けても意味に変わりがないのも日本・アメリカともに同じです。

   ところがイギリスでは、この勝利のVサインの向きがくるっと裏返しになって、手の甲側を相手に向けると、途端に「勝利」の象徴が「侮辱」のメッセージへと変わってしまいます。イギリスに語学留学に行った学生たちは、ホストファミリーと写真をとるときに手の向きを気にせずにVサインを出してしまい、イギリスでは手の向きは決定的要因であるから要注意と教わって帰ってきます。

   このVサインのように、単語や語句に置き換えられる意味を持つジェスチャーを「表象動作(emblem)」といいます。表象動作はひとつのジェスチャーが良い意味と悪い意味をあわせ持っていたり、地域によってまったく異なる意味で使われることが多いので注意が必要です。

(2009年2月23日)
ジェスチャーイラスト
『日米ボディートーク』より「二本指立て」。
数字の「2」や「Vサイン」として使う。
日米では手の向きで意味が変わることはない。





東山 安子(とうやま やすこ) 東京生まれ。日本女子大学大学院・コロンビア大学大学院・シカゴ大学大学院修了。明海大学外国語学部教授を経て、現在、同大学院、立教大学大学院にて教鞭を取る傍ら、異文化間非言語コミュニケーション領域の執筆活動に従事している。



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