
連載「日本のジェスチャー・世界のジェスチャー」 第13回
連載 「日本のジェスチャー・世界のジェスチャー」 東山 安子
第13回 日常のしぐさ(3) 「飲む」
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食文化は、それぞれの地域で採れる作物、料理法、食器、食べかたなどに応じて異なりますが、それにともなって、「食べる」、「飲む」のしぐさも多様になります。
日本では、「今夜どう?」と言いながらおちょこで飲むしぐさをすれば、お酒を飲みに行く誘いになります。ビールを飲むなら、グラスで飲むしぐさも使われるでしょう。韓国でも、おちょこで飲むしぐさを使うといいます。ただ、年長者や親の前で実際にお酒を飲むときには、相手に敬意を払って、横を向いてもう一方の片手で杯を隠して飲みます。儒教文化の影響が強い韓国ならではの習慣でしょう。
お互いにお酌をする習慣も、日本と同様に韓国でもあるといいます。目上の人には両手でお酌をし、友人には片手でします。初対面で目上かどうかわからないときには両手でするようです。西欧ではお酌の習慣はないので、ビールを注文しても通常グラスはひとつしかでてきません。それぞれが自分の頼んだ飲み物を、自分のペースで、自分でついで飲む、というのが西欧の一般的な飲み方です。
「のどが乾いている」とか「何か飲みますか」という意味で、親指と小指を伸ばしてほかの指は握り、口のほうへ弧を描くように動かすしぐさは、スペインや南米のスペイン語圏、アラブ文化圏でみられます。これらの地域では革製のびんに飲み物を入れて飲むため、その様子をジェスチャーで表しているとモリスはいいます。
今回挙げた、おちょこやグラスで飲むしぐさ、革製のびんで飲むしぐさなどは、それぞれの入れ物を持っているところを手で真似たジェスチャーです。モリス(※第1回参照)はこれらを「模倣動作(mimic gesture)」と呼んでいます。
(2009年1月22日)
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