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連載「日本のジェスチャー・世界のジェスチャー」 第4回


連載 「日本のジェスチャー・世界のジェスチャー」 東山 安子 第4回 世界の挨拶(3)「さまざまな挨拶の形」


   世界には、お辞儀や握手以外にもさまざまな挨拶があります。たとえば、お互いの鼻先を合わせることで友情をこめた歓迎の挨拶をするのは、ニュージーランドのマオリ族などです。私が教えていた大学ではニュージーランドに留学先があったので、現地でこの挨拶を体験してくる学生が何人もいました。この挨拶の起源は、旅から戻ってきた相手の身体の臭いを嗅ぐ習慣があった時代にさかのぼる、とモリス(※第1回参照)は述べています。

   アラブ社会では、出会いと別れの正式な挨拶として「額手礼(salaam )」があります。片手で胸・口・額の順に触れ、最後にその手をかざし、しばしばお辞儀を伴います。「私の心、魂、知力をあなたに捧げます」というメッセージを伝える挨拶で、正式な場で用いられることが多いようです。

   「指先キス」が挨拶として使われる地域もあります。指先キスは、2000年以上前から知られている古くからのジェスチャーで、古代ギリシャ人やローマ人は神殿に出入りするとき、神の像に対してキスを投げる習慣があったと、モリスは述べています。もともとは崇拝の意味で使われたものが、おいしい食べ物やすばらしい芸術作品に対する賞賛の意味で使われるようになりました。このジェスチャーは、ポルトガルやスウェーデンでは一般的な挨拶として用いられるそうです。 (2008年8月25日)


『ボディートーク 世界の身ぶり辞典』より「鼻こすり」。
鼻の先を相手の身体につける挨拶行動。通常、鼻先と鼻先を合わせる。 
(イラスト:小野原礼子)

『ボディートーク 世界の身ぶり辞典』より「指先キス」。
指先を軽く唇にあて、その手を口先から遠くへ投げるようにする。
(イラスト・小野原礼子)






東山 安子(とうやま やすこ) 東京生まれ。日本女子大学大学院・コロンビア大学大学院・シカゴ大学大学院修了。明海大学外国語学部教授を経て、現在、同大学院、立教大学大学院にて教鞭を取る傍ら、異文化間非言語コミュニケーション領域の執筆活動に従事している。



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