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連載「日本のジェスチャー・世界のジェスチャー」 第17回


連載 「日本のジェスチャー・世界のジェスチャー」 東山 安子 第17回 日本人に特徴的なジェスチャー(1)「鼻を指す」


   この連載も終わりに近づいてきました。最後に取り上げる項目は「日本人に特徴的なジェスチャー」です。

   第7回で、「○○人のジェスチャー」という大ざっぱな捉えかたには危険性があるということをお話ししました。したがって、ここで取り上げるジェスチャーも、「日本人のジェスチャーである」とは断言できません。しかし、今まで私がおこなってきた調査や多くの留学生たちの話から、比較的、日本人に特徴的なジェスチャーなのではないかと考えられるものをご紹介します。

   今回は、自分の鼻を人さし指で指して「私」を意味するジェスチャーです。これは、遠くから呼ばれて「私のこと?」と確認するときや、子供が「私も私も!」と自分を強調するときなどに使います。

   日本でよく使われるジェスチャーのひとつですが、調査をしたアメリカ人たちには理解されませんでした。「鼻がどうしたの? 」「鼻がかゆいの?」と言われてしまいます。欧米では、「私」を表すときには人さし指や片手で胸を指します。手のひらを胸に当てるときもあります。日本でも胸を指すことはあり、鼻を指すよりも丁寧な印象になります。

   モリス(※第1回参照)も、「鼻を指して私を意味するジェスチャー」は日本で使われると著書『ボディートーク 世界の身ぶり辞典』で書いています。

   西欧で胸を指すのは、自我が胸部に存在すると考えられているからです。これは、魂が息の中に具現すると信じられていた時代にさかのぼり、肺が胸部にあるので魂の中心に違いないと考えられたのであろうとモリスは述べています。
(2009年3月23日)
ジェスチャーイラスト
『日米ボディートーク』より「鼻を指差す」。
自分のことを確認したり、強調したり、印象づけたりするときに使う。
ジェスチャーイラスト
『日米ボディートーク』より「胸指し」。
欧米で「自分」「私」を意味するジェスチャー。日本でも使う。





東山 安子(とうやま やすこ) 東京生まれ。日本女子大学大学院・コロンビア大学大学院・シカゴ大学大学院修了。明海大学外国語学部教授を経て、現在、同大学院、立教大学大学院にて教鞭を取る傍ら、異文化間非言語コミュニケーション領域の執筆活動に従事している。



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